vol.8 浅田真梨子(マゼラン・リゾーツ・アンド・トラスト株式会社)

浅田真梨子/1991年生まれ 金沢市出身/マゼラン・リゾーツ・アンド・トラスト株式会社 シニアトラベルコンサルタント

海外から日本を訪れる観光客の数は、年々増え続けています。観光施設、文化体験、食べ物、自然など、さまざまニーズがある中、それぞれに合ったプランを吟味し、提供しているのが、マゼラン・リゾーツ・アンド・トラスト株式会社のインバウンド事業部です。シニアトラベルコンサルタントとして商品開発に携わっている浅田さんに、今回はお話を伺いました。

映画『インディー・ジョーンズ』が大好きだった10代。

海外とのやりとりが多い業務ですが、昔から海外に興味があったのですか?

両親が大の洋画好きで、物心ついたときから洋画に触れていました。洋画の世界は、普段自分が生活している世界とは全然違いますよね。観るたびに「すごいなぁ…」と心が動かされて、いつの間にか私も大の洋画ファンになっていました。特に好きだったのが『インディー・ジョーンズ』です。ハリソン・フォード主演の冒険映画ですが、合計で何十回観たか数え切れません(笑)。ハリソン・フォードに憧れて、それがいつしか外国への憧れになりました。

インディー・ジョーンズ、かっこよかったですもんね!わかります(笑)

洋画が大好きになり、次第に洋楽にも興味が出てきて、ビートルズもよく聴くようになりました。学校の勉強はあまり好きではありませんでしたが、英語だけは苦手意識がまったくなくて、習うのがとても楽しかったです。単語を覚えるのも苦にならず、「あ、この単語を使えばこう伝わるんだな」と、知識が増えることがうれしかったですね。

高校2年生の夏に、短期語学研修で2週間ほどオーストラリアに行く機会を得ました。人生で初めての海外です。

初めての海外で「自分の生きている世界がすべてではない」ことを知る

映画の世界ではなく、実際に体験する海外はいかがでしたか?

もう衝撃でした。「こんな世界があったのか!」と(笑)。言語が違う。食生活が違う。街の雰囲気が違う。

自分がこれまで生きてきた世界とまったく違いました。

大家族のホストファミリーと一緒に

ホームステイ先は大家族で、お父さん、お母さん、上は社会人から下は5歳までの4人の子ども、おばあちゃん、あと社会人だったお兄ちゃんの彼女も一緒に住んでいました(笑)。加えて、犬が3匹。最初は日本で勉強していった英語でコミュニケーションが取れなくて、大変な思いもしましたが、みんなそれぞれ気を遣って接してきてくれました。ありがたかったですね。日中は現地の高校の研修生用コースに通って、英語の授業を受けました。

貴重な体験を得られた2週間だったと思います。

何より新しい価値観を得ることができました。その地域の人たちは、裸足で外を歩くんです。海まで何十分も(笑)。裸足でスケボーもします。また、水不足なので、お皿を洗うときは水で流しません。シンクに水をためて、洗剤を入れて、中で洗って、そのまま出す、という感じです。「お皿に洗剤が残ってるよー」と心の中で叫びました。

新しい価値観に触れたことで、「自分の知っている世界がすべてではない」、「自分の知っているやり方が唯一の正解ではない」、ということが実感として分かるようになりました。帰国後、両親からは「オーストラリアから帰ってきてから何か変わったよね」と言われましたね。

その後の進路にも大きな影響を与えたのではないでしょうか。

海外への思いがますます高まりました。高校での進路調査で、「○○大学○○学部希望」と書くべきところを「アメリカのピザ屋で働きたい」と書いて提出し、先生から呼び出しを受けたこともあります(笑)。

「そこまで海外に興味があるのなら」と先生が教えてくれたのが、外国語大学の存在です。同じころ、卒業生が在校生に進路を語ってくれる会があり、関西外国語大学に通う先輩の話を聞くことができました。とても興味深い内容で、自分の進みたい進路はこれだと確信し、関西外国語大学への進学を決めました。

大学も新しい世界でした。外国語大学なので、帰国子女や留学経験者、両親が外国人といった学生がたくさんいました。留学生の数も多く、外国に行かずとも外国のような雰囲気でしたね。

外国語学部英米語学科の必修クラスの半分は、外国人の先生が担当していて、授業も資料もすべて英語です。英語はそこそこできるつもりでしたが、レベルの違いを痛感しました。この大学では、学内選考試験に受かれば、学費は学校負担で1年ほど留学できるコースがあります。4年生のときに、この選抜試験に受かって、留学に向けて準備を進めていたのですが、情けないことに準備段階で挫折しました。実際に留学した友達の死ぬほど勉強している様子や、成績が悪ければ強制帰国とペナルティーが課せられる事実に怖気づいてしまったんですね。

この時点で、すでに就職活動の波にも乗り遅れています。卒業後の進路が何も決まらないまま、金沢に戻ってきました。

就職活動に乗り遅れ、ハローワークで職探し

留学をあきらめ、新卒での就職活動に乗り遅れて、その後どうやって立て直すことができたのでしょうか。

正直なところ、仕事を得るためにどういう順序をたどればよいのか分かりませんでした。思いつくのはハローワークくらいです。特に期待もせずにハローワークに行きました。そうしたら予想以上に新卒や若い世代向けのサポートや求人があったんです。そこで、今の会社を見つけました。

「英語だけは人一倍学んできたから、英語を使えば誰かの役に立てるかもしれない」と思い、旅行業を通して海外とやり取りができる、今の会社に飛び込みました。会社にとっては、初めての新卒だったので、1年目で未経験のところから上司や先輩に育ててもらいました。

現在は具体的にどのようなお仕事をしているのですか?

会社では、アウトバウンド事業とインバウンド事業の大きく2つを取り扱っていて、私はインバウンドを担当しています。海外のお客様が現地の旅行会社に日本へのツアーを申し込むと、その旅行会社から当社に「プランを組んでほしい」という問い合わせが入ります。お客様の希望に沿った旅程を考えて、それを現地の旅行会社に提出します。それに対して、「もっとグルメを」「文化体験を」「自然を」などのリクエストが入り、何度も相談を重ねて、最終案を作り上げます。OKをもらったら、ホテルを予約し、ガイドを用意し、移動手段を確保し、レストランを押さえ、すべてのスケジュールの管理ができた状態で、ひとまずプラン完了です。

マニュアル通りにいかないことが多いからこそ、対応力が養われる

なるほど。こうやってお聞きすると準備することだらけ。でも旅行ってプラン通りに行かないことが結構起こりますよね。

おっしゃる通りです(笑)。何が起こるか予測できない部分があります。台風が直撃したり、電車が止まったり、お客様が体調を崩したり。マニュアル通りにいかないことが発生するので、その都度対応を迫られます。

観光中に具合が悪くなって、ガイドさんの付き添いで病院にかけこんだら、緊急手術が必要になった、というお客様がいました。現地の旅行会社に報告したり、付き添いのガイドさんと話をしたり、もうバタバタです。手術後もすぐに帰れるわけではないので、ホテルの滞在を伸ばしたり、あるいは病院近くのホテルを押さえたり、急な対応が求められているときは深夜に及ぶこともあります。

だからこそ、手配したお客様たちが、何のトラブルもなく無事に日本から出国されたときには「よかったなぁ」と心底ほっとしますね(笑)。

お聞きしているだけで大変さが伝わってきます。一方で、大変な分だけ達成感も大きくないですか?

プランが何もない段階から作り上げて、何回もやりとりして、終わりまで一貫してお世話することができるので、無事に帰国したお客様から「おかげでいい旅行だったよ」と言ってもらえると、この仕事をしていて本当によかったと思えますね。現地の旅行会社から「お客さん喜んでたよ。ありがとう!」という言葉をもらうこともあり、それもとても励みになります。

地域によって旅の目的が少しずつ違うのも勉強になって面白いです。当社のお客様は北米、南米、中米、欧州の方が多いのですが、南米の方たちは、周りに自慢できることが重要みたいです。「有名なここに行った!これを食べた!」みたいに。それに対して、欧州の方は、自分がやりたいことをいかにできるかが第一で、人に見てほしいという動機はあまり感じません。あくまで私個人の印象ですが(笑)。

トラベルショーへの出展でフランスのカンヌに行きました

旅行業を通して、人や文化を学ぶことができるんですね。今後のキャリアプランについてはどう考えていますか?

今仕事をしていてすごく楽しいので、具体的な将来のビジョンはありません。とことん今に集中しています(笑)。ただ、一昨年から役職がついて、責任者としての役割も与えられているので、どうやってチームとしてもっと快適に楽しく仕事をして、お客さんにもっと満足していただけるか、というのは模索していきたいです。現在、チーム全体で9人のメンバーがいます。何をするにも、自分のことだけ考えていてはいけないと感じています。

労働環境としては結構タフです。オフシーズンは定時で上がれますが、桜や紅葉の時期といった繁忙期は、仕事にフルコミットです。

入社当初は、この仕事に向いているのか、長く続けられるのか、まったく分からなかったけれど、想像以上に自分に合っていたようで、楽しく仕事できています。

プライベートの時間はありますか?

プライベートでも旅行が好きです。今週末は両親と別府に行ってきます。急に思い立って、ふらっと出かけるのも好きですね。少し前にはひとりで出雲大社に行ってきました。おごそかな雰囲気を感じられてとてもよかったです。

1泊2日のひとり旅で出雲大社へ

旅行という大げさなものではなく、自宅から1時間歩いて知らないところに行ってみるというような、ひとりプチ遠足も好きですね。新しい何かを見つけるのが好きなのかもしれません。

金沢のことをたくさん体験して学びたい

プライベートの趣味と仕事とがいい感じでリンクしてますね。

確かに(笑)。プライベートで遊ぶついでに、現地調査もしてますね。今行きたいところは、この夏にオープンした『谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館』です。個人的な興味はもちろん、やはり自分で体験して「よい」と思ったものをお客様におすすめしたいので。

金沢のことはたくさん学んでおきたいです。金沢に住んでいるなら金沢のスペシャリストだろうと当然思われますから。お客さんより先に情報を手に入れないと話にならないですし、なおかつネットの情報ではなく、実際に体験してこそ、自信を持って提案ができると思っています。プライベートといいながら、仕事の話になってますね(笑)。

今は自分のことで精一杯ですが、子どもがいる生活には憧れます。ご縁があれば、結婚や子育てもしてみたい。新しい世界、新しいチャレンジですもんね。

では最後に若い世代へのメッセージをお願いします

私自身にたくさんの経験があるわけではないので、メッセージなどおこがましい気もするのですが。

私の祖母が変わった人で、私が人と違ったことをしようとしても、祖母はいつも「好きなことを好きなペースでやればいいよ」と背中を押してくれました。

今振り返ってみれば、人生の岐路に立ったとき、家族は応援してくれて、友人たちは優しく、そして仕事では貴重な縁がありました。私自身、まだ道半ばですが、周囲を大切にすることで縁がつながっていくのかなと感じています。これからも、今に集中して、焦らず自分のペースで進んでいけたらと思っています。

1日のスケジュール

7:30起床
9:25出社
21:00帰宅 お風呂 夕食
24:00就寝

My History

22歳関西外国語大学外国語学部英米学科を卒業
マゼラン・リゾーツ・アンド・トラスト株式会社入社
25歳シニアトラベルコンサルタントに就任
28歳現在

2019年9月取材
インタビュアー 長谷川由香(子育て向上委員会)