vol.6 三澤志織(株式会社計画情報研究所)

三澤志織/1984年生まれ 岩手県盛岡市出身 子ども1人/株式会社計画情報研究所 研究員

自治体や地域、企業の要望を聞きながら、都市づくりやまちづくりの提案をおこなう建設コンサルタント。今回は金沢の建設コンサルタント会社、株式会社計画情報研究所で、主に交通政策に携わっている三澤さんにお話を伺います。

「数学が得意なら理系」と進路指導で言われ、深く考えずに工学部へ

出身は岩手県盛岡市です。大学まで岩手県で過ごしました。

高校時代は、世の中にどんな職業があるのかもよく分からず、「将来この職業につきたい」という具体的な夢や目標も特になく、「とりあえず楽しく過ごせたらいいかな」と考えていました。

当時、得意だった教科は数学です。高校の進路指導では、「数学が得意なら理系の学部へ」と言われました。どうせ理系を選ぶならば医療系がいいかなと思い、私立大学の医療系の学部を受験しました。しかし残念ながらそこは不合格。先生から「とりあえず国立も受けておきなさい」と言われ、受けておいた岩手大学工学部から合格通知をもらったので、深く考えずにそこに行くことにしました。工学部の建設環境工学科です。

強い気持ちがあって建設環境工学科を選んだわけではないのですが、国交省に勤めていた親族がいたり、家族からも喜んでもらえたりしたので、結果的にはよかったです。大学が自宅から自転車で10分ほどの場所にあって、一人暮らしの生活費はもちろん、交通費すらかからなかったというのも、親孝行だったかなと(笑)。

「男の職場」で繁忙期は終電帰りが当たり前の日々

親御さんとしてはありがたかったと思います(笑)。さて、大学で建設環境工学について学んだ後、得た知識をどんな形で活かしたのでしょう?

大学卒業後は、仙台の建設コンサルタントに就職しました。

会社の人間関係はとてもよかったのですが、仕事が非常にハードでした。繁忙期は終電や休日出勤が当たり前でした。終電に間に合わずタクシーで帰ったことも何度もあります。「残業ができない人間はいらない」という雰囲気が社内にありました。

女性スタッフの数も少なく、大半が総務部署での所属で、技術職として働いている女性は、私を含め2名しかいませんでした。

完全に「男性の職場」ですね。

建設や土木というのは「男性の職場」なんだなと実感しましたね。私が所属していた交通計画部門も含め建設コンサルタントは残業が必須のような場所でした。男性スタッフを見ていると、彼らは結婚して子どもがいて、奥さんが家のことをすべてしてくれているんですよね。それを自分に置き換えたときに、「この仕事は、自分が結婚して子どもを産んだら、到底続けることはできない」と思わざるを得ませんでした。

そのハードな仕事を何年くらい続けたんですか?

29歳まで続けたので、7年です。金沢への引越しを機に退職しました。

仙台で忙しく仕事をしていた日々から、金沢に来ることになったきっかけはなんでしょう?

仙台で働いていたころに、友人を介して、のちに夫となる人と出会いました。彼は東京生まれの東京育ちで、全国転勤のある会社に勤務していました。彼は社会人1年目には東京で働いていたのですが、2年目以降、転勤で仙台に来ていました。交際を経て、結婚したのが2013年の夏です。2014年に夫が金沢に転勤になり、それまで縁もゆかりもなかった金沢に2人で一緒に引っ越して来たという形です。

金沢で残業をしない働き方に出会う

ようこそ金沢へ!仙台で結婚して、わずか1年後に金沢で新生活ですね。つてのない状態で、どのように今の会社にめぐりあったのでしょうか?

金沢で仕事を探すにあたって、建設コンサルタントはやめようと思っていました。仙台時代に十分すぎるくらい味わったので(笑)。金沢に越してきた当時はまだ29歳でしたし、建設コンサルタント以外の未知の分野で働いてみるのも面白そうだな、という気持ちもありました。

しかし、まったく知らない土地で、親族も友達もいない。どこに何を相談したらいいのかも分からない。自ら新しいことを始めるバイタリティも、正直なところありませんでした。いろいろ考えた末、やっぱり自分の力を活かせる業界は建設コンサルタントだと思い直し、どこかパートとして雇ってもらえるところはないかと仕事探しを始めました。

そこで見つけたのが、現在勤めている計画情報研究所です。

再就職の就職活動って、新卒とはまた違った緊張感がありそうですが。

連絡をして面接を受けさせてもらったんですが、第一印象は「建設コンサルタントって感じがしない!楽しそう!」でした(笑)。女性が多くて家族的な雰囲気が、最初に訪ねたときから感じられました。こんなアットホームな場所で働けたらいいなぁ、と。仙台時代に経験を積んだ交通系の業務を行っているという点にも興味を惹かれました。

面接の際に、かつて終電を逃してまで働く生活をして疲弊した経験から、「残業をしない働き方をしたいです」と伝えたところ、「いいですよ」というお返事。「あなたが働きたいように働けばいい」と言ってもらいました。そして私の希望を伝えた上で、「ぜひ来てください」という言葉をいただきました。

人柄はもとより、前職での経験も評価されたんでしょうね。実際に働いてみていかがですか?

ほとんど残業をしなくていい形で働くことができています。「資格を取りたい」「私生活も充実させたい」「今は仕事に打ち込みたい」など、各個人のライフステージに合わせて、さまざまな働き方を会社が認めているというのが、当初は驚きでした。こんな働き方も可能なんだ、と。

会社だけにコミットせずに、各自が働きたいように働く。ただし、その自由には責任が伴います。会社が「あなたがしっかりとやるという前提で、その働き方を認めます」と言ってくれている以上、こちらは責任を持って自分の仕事を遂行する。そういう仕事のやり方です。

業務の検討委員会の写真。右端の方でノートに記録しているのが私です

足りないものを嘆かずに物事のよい面を見つける

計画情報研究所に再就職してから出産をされたとか?

入社して1年ちょっとで妊娠が分かりました。育休は子どもが1歳になるまで取得させてもらいました。

復帰する際には、最初は時短の9:00~16:00勤務でスタートして、慣れたころに8:30~16:30勤務に延長。この4月からは、私の希望で通常の始業時間より1時間早い8:00~17:00の8時間勤務のフルタイムで働いています。朝が早いと思われるかもしれませんが、朝型勤務の方が自分のライフスタイルに合っているんです。早い時間から仕事を片付けた方が1日をうまく回すことができるので。

子どものお世話をしながらの8時出社はなかなか大変だと思いますが。

それが案外回せるんですよ。例えば、私がお弁当づくりをしている間に夫は娘と一緒に朝食をとります。その間、娘の食事の世話は夫が担当です。夫が食べ終わったころに、私が朝食を食べながら娘の食事の世話をします。その間、夫は食器洗いをします。家事を分担しながら、娘の世話をリレー方式でこなすという形ですね。互いにできることをシェアすることで、7時30分には家を出るというスケジュールで回しています。ちなみに、朝保育園まで娘を送っていくのは夫の担当です。

夫婦間の連携プレーがすばらしいですね。

私も夫も金沢が地元ではないので、家事や育児で頼りにできる実家が身近にありません。自分たちの力だけでやっていくしかない。でも、いないなら、いないなりに何とかなるもの。「あれが足りない、これが足りない」と足りないものを嘆いていてもしょうがないですよね。悪い方向ばかり見ずに、よい面を見るように心がけています。

業務上忙しい時期もあると思いますが、そういうときはどう対処していますか?

建設コンサルタントの繁忙期は毎年1月~3月です。年度末に報告書の提出や納品が重なる関係上、その時期だけは、やむを得ず残業や土曜出勤でカバーすることがあります。

残業が前もって分かっているときは、あらかじめカレーを作っておいて、夫に保育園のお迎えに行ってもらい、娘と2人で夕食を食べてもらう、などの方法で対応します。夫も夫で忙しい時期がありますので、夫婦でスケジュールを共有管理するようにしています。今までこのやり方で乗り切ってきました。基本的には、残業面の考慮をしてもらっているので、繁忙期さえ乗り切れれば大丈夫です。

幼い子どもを育てながら働くとなると、企業側の理解は不可欠ですよね。

弊社の代表は女性ですが、代表が子育てをしていた時代は、育児と仕事を両立することへの社会的理解が低かったと聞いています。当時は、子どもを持ったら仕事を諦めなければいけない女性が多かったと。そんなかつての女性たちの声を受けて、次の世代の女性たちが時短という働き方を作ってくれました。たくさんの先輩方が前例を作ってくれたおかげで、今の私の働き方があります。

以前、繁忙期に子どもが保育園で熱を出し、お迎え要請の電話が来たことがありました。誰もが忙しくて余裕がない状況なのに、「子どもが熱を出してしまって」と伝えたところ、「こっちのことはいいから、早く迎えに行ってあげて」と声をかけてもらいました。育児をしながら仕事をしていると、子どもの病気は避けては通れません。そんなとき「帰ってあげて」という温かい言葉に救われました。

その気持ち、すごく分かります。こういうときって周囲の優しさが身にしみますよね。

私が子育てをしながら、やりがいのある仕事ができているのは、職場のスタッフ、夫、保育園の先生方など、周囲の助けがあってのものです。会社には若い世代も入社してきています。いずれは今私がしてもらっていることを、次の世代にしてあげたいですね。

こんな風に思えるのは、アットホームな社風にも理由があるかもしれません。社内では、年に1度『家族参観日』というものがあり、社員の家族も招いてみんなで交流をしています。子どももプチ研究員として、社内のお掃除をしたり、コピー機を使ってみたりと、パパやママの仕事を体験するんです。こういう時間を社員同士で共有できるのは、大きなメリットがあると感じています。

家族参観日にて子どもの役職任命と名刺の授与 ※娘の役職は人見知り部長です

やりがいのある仕事と思いがけず叶った夢

業務について伺いたいのですが、現在は具体的にどういった内容の仕事をされているんでしょうか?

業務は、自治体や地域、企業の要望を聞きながら、都市づくりやまちづくりの提案をおこなっていくことです。

私は仙台時代も現在も、主に交通系の業務に携わっています。例えば、都市の交通政策についての方針を検討するために、公共交通の利用者や沿線住民にニーズ調査を実施し、公共交通の利用状況等を分析して、今後の運行方法に関する課題等のとりまとめをおこなっています。まちづくりに関わる非常にやりがいのある仕事です。

また、渋滞問題や環境問題、個人の健康等の問題に配慮して、過度に自動車に頼る状態から公共交通や自転車などを『かしこく』使う方向へと自発的に転換することを促す、『モビリティ・マネジメント』の業務を担当しています。働きかける対象が、公共交通の沿線住民から小学生まで幅広く、金沢市内の小学校へ出前授業もおこなっています。

普段のお仕事もやりがいがありそうですが、出前授業も楽しそうですね。

出前授業は、各学年の理解度に合わせたプログラムになっています。公共交通が地域のみんなにとって大切なもので、環境に優しいものであることを知ってもらったり、バスの秘密などを知ることで公共交通に興味を持ってもらったりする内容です。

実は昔、小学校の先生や保育士さんになるのもいいかなと思っていた時期もありまして(笑)。今はまったく違う仕事をしていますが、出前授業という形で、子どもたちと関わることができて、かつての夢が叶えられているのは嬉しい誤算ですね。

小学生にCO2を計測する機器の取扱い方を説明しています

仕事をしていて悩んだり落ち込んだりすることはありますか?

子育て真っ最中で、子どもにとっての母親は自分ひとりしかいない、ということは頭で分かりつつも、周りが仕事を通して成長しているのを目の当たりにして、できない自分に歯がゆく感じることは何度かありました。「もっとやらなくちゃ!」と焦ったり、「もっとやりたい!」と欲が出てしまったり。

私も働く母親の一人としてよく理解できます。

社会的には、女性が家事をして毎日のご飯が作るというのが大前提になっています。子どもの世話の基本もお母さん。保育園の送り迎え、子どもが熱を出したときなど、お母さんありきで動いている世の中に疑問を感じてしまうこともあります。男性は補助的に手伝うものという意識から、主体的に家事・育児に関わるという考え方に変わっていってほしいですね。

もちろん、昔に比べたらずいぶんと良くなりました。今後さらに、男性の家事育児への参加が、特別なものや持てはやされるものではなく、ごく普通のものになっていってほしいです。

生き方に正解はないから「なるようになる」とポジティブに

さて、今後のキャリアプランについてはどう考えていますか?

自分より前を歩いていて目標となる先輩方がいます。先輩方のように、その都市に住む人が笑顔になるような、都市づくりやまちづくりの提案をできるようになりたいと思っています。同時に、若い世代も入ってきているので、後輩たちの役にも立ちたい。結婚や子育てで悩んだときにはよき相談相手になりたいですし、みんなで力を合わせて、さらに働きやすい環境を一緒に作っていけたらと考えています。

子育ての最中でプライベートの時間はなかなか取れないと思いますが、気分転換はできていますか?

年に数回、子どもを連れて東北に帰省するので、その際に観光をしたり、おいしいものを食べたりするのが一番の楽しみですね。

普段の週末は、近くの公園に家族で出かける程度ですが、石川県内にはたくさん公園があるので、発見もあって面白いです。家族でのんびりした時間を過ごすのが何よりのリラックスタイムかもしれません。

東北へ帰郷の際の野球観戦。仙台市楽天生命パーク宮城球場にて

最後に若い世代へのメッセージをお願いします。

物事は「なるようになる」と思います。女性は、結婚や出産といったライフイベントが、キャリアに少なからず影響を与えます。課題に直面したときに諦めてしまうのは簡単だけれど、自分にやりたいという気持ちがあれば、意外と周りは理解してくれるもの。職場にも家族にも、自分の味方は思っているより多かったりします。

そして、支えてもらったときは「申し訳ない」や「ごめんなさい」と、謙虚になりすぎず、卑屈にとらえすぎず、「ありがとう」と感謝をしたらいいのかなと。頼るべきときは、周囲を頼っていいと思います。

ネガティブではなくポジティブに。生き方にどれが正解というものは多分ありません。きっとどれもがすべて正解です。私自身も、物事を負でとらえず、「なるようになる」と肩の力を抜いて、周りを巻き込んでみんなで楽しくやっていきたいです。

1日のスケジュール

5:45 起床
自分の時間
(自分の支度など)
6:15 家事
(朝食・弁当づくり、子どもの支度など
※夫と役割分担しながら進める)
7:30 会社へ
(夫が子どもを保育園へ)
8:00 出社
17:00 退社
17:30 保育園にお迎え
17:40 帰宅
家事
(次の日の支度、夕食づくり、入浴、洗濯など
※夫が帰宅した場合は、そこから役割分担しながら進める)
21:00 子どもとの時間
(子どものしたいことを一緒にする時間 例:おままごと、絵本など)
21:30 子どもの就寝準備
(子どもと一緒に布団に入りながら話す)
22:00 自分の時間
(自由時間)
23:00 就寝

My History

22歳 岩手大学工学部建設環境工学科卒業
仙台市(宮城県)へ移住
仙台市の建設コンサルタント会社に就職
28歳 結婚
29歳 仙台市の建設コンサルタント会社を退職(夫の転勤により)
金沢市へ移住
株式会社計画情報研究所に就職
31歳 第1子出産
34歳 現在

2019年5月取材
インタビュアー 長谷川由香(子育て向上委員会)