『クリティカルシンキング』とは、当たり前のものとされてきた業務や慣習に疑問を持ち、客観的に物事を判断する力のことで、『批判的思考力』とも呼ばれています。物事を鵜呑みにしない力、考える癖をつけるにはどうしたらよいか、2日間のセミナーを通して学びました。
日時 | <第1回>2022年8月19日(金)13:30~17:00 <第2回>2022年8月26日(金)13:30~17:00 |
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対象 | 石川中央都市圏で働く若手~中堅女性 |
研修 | 会社株式会社インソース |
参加者 | 第1回:34名/第2回:29名 |
オンラインセミナーということで、Zoomを利用しての開催です。参加者はAからEまでの5つのグループに分けられ、各グループで自己紹介が行われました。講師から「グループ内メンバーの共通点を最低1つ探してください」という課題も出され、各グループから「最近みんなおいしい果物を食べた」「全員に誕生月に1が入っている」「きょうだいがいる」などの共通点があげられ、楽しいアイスブレイクタイムとなりました。
各グループで、リーダー、タイムキーパー、発表者を決め、講座のスタートです。
まずは研修資料の冒頭に記載されているケーススタディに取り掛かります。「在庫管理のトラブル」を例に、「本当かな?」と疑問を感じることを、個人で考えて記入する時間が持たれました。個人ワークを終えた後で、講師から『クリティカルシンキング』 について説明を受けます。
『クリティカルシンキング』とは
「当たり前だと思っていると思考停止してしまうので、いろいろな角度から見ていく癖をつけましょう」と講師。現在アメリカでは、若者の育成プログラムにおいて、『クリティカルシンキング』のスキルを非常に重要なものとして見ているそうです。
ビジネスの分野において、クリティカルシンキングがどのような効果をもたらすかについて説明がありました。例えば、『うちの部署だけ残業が多い』という事実に対して、クリティカルシンキングができないと「残業させずに定時で帰らせよう」というその場しのぎの対応になりがちとのこと。クリティカルシンキングの習慣があれば「残業が多い理由は何か?」「仕事が属人化していないか?」「マニュアルが必要か?」「ミスの多さの実態はどうか?」など、仮説を考えて対応策を考えることができます。非常に大切なスキルと言えそうです。
クリティカルシンキングを通して身につくスキルとして、主体性、説得力、リーダーシップなどがあげられました。地域のごみ拾いに参加するときにも「なぜごみ拾いをするのか」という背景を考えることで、主体性が生まれ、気づきを得ることができる、と身近な例を取って説明されていました。
クリティカルシンキングの基本を学んだ上で、いよいよワークタイム。
『自身の仕事において不安を持つとき』というテーマで、各自で考え、グループ内で意見のシェアが行われました。参加者からはさまざまな意見が出され、各自が今まで深く考えずにやってきた業務も、深掘りすることで疑問が生じることがたくさんあると分かりました。続いて、『ビジネス以外のどんな場面で無意識に疑っているか』というテーマでグループワークが行われました。これに対しても、「占い」「子どもの『宿題終わった』という言葉」「インスタ」など、非常に面白い意見が出ていました。
クリティカルシンキングの要素~3つのポイント~について解説がありました。
論理性とは何かを学ぶため、ロジカルシンキングのワークが2つ行われました。ワークを通して、講師からは、「主張に対して根拠が支えているかどうかしっかり確認しよう。100%正解がないからこそ、納得感があるかが大事」というアドバイスがありました。視野を広く深く考えることや「それって本当?」と考え抜くことが大切とのことです。
感情的にならないこと、多面的な視点で考えること、事実をもとに考えること、など、できる限り中立を意識することがクリティカルシンキングには必要となるそうです。
誰にでも思い込みは存在しているからこそ、意識して「当たり前」を疑ってかかることが思考停止から抜け出す第一歩、とアドバイスを受けました。
1日目の最後には、冒頭で行なわれた「在庫管理のトラブル」のケーススタディに戻り、学びを踏まえながら、疑問点と解決策を個人ワークで洗い出しました。学ぶ前と後では、内容の精度が違ってきそうです。
さらに講師から「日常生活の中でクリティカルシンキングを実践してみよう」という宿題が出されました。1週間後に再び参加メンバーで集まる時間が楽しみです。
第2回目は、1回目の振り返りから始まりました。先週の宿題である「クリティカルシンキングの実践」については、「テレビの情報が本当に事実なのか疑うようになった」「ルーチンワークについて、決めつけるのではなく考えてみた」などの声があがりました。「正しい情報は何を持って調べたらいいのか疑問に思った」という感想に対して、講師からは「正解はひとつではない。納得感があるかどうかが大事」というアドバイスがあり、「意識しないと難しい」という声には、「気づいただけでも進歩」と応援の言葉が送られました。
クリティカルシンキングの手順に従って、いよいよ実践編に入っていきます。
「人は自分の経験によって、考え方や感情を決めつけてしまう」と講師。例として友達関係をあげ、誰もが思考が似ている人と仲良くなろうとし、考え方が違うと距離を置こうとしてしまう現実に言及します。同じような思考の人と時間を多く過ごすことになると、さらに思考は偏ってしまうので、長い時間をかけて思考の癖は蓄積されやすいとのこと。
疑う訓練として、3つのケースについてグループワークが行われました。意識して考えると、「それは本当か?」と思うことがたくさん出てくるようで、非常に多くの発言がなされていました。講師からは「ぜひご自分の仕事でも、全部出し切るという視点を大事にしてほしい」というアドバイスが送られました。
分析をする際には、視点を変えることが大事との話がありました。その際には、自分以外の視点が漏れてないかひとつずつ検証していく必要があるとのこと。さらに、共通項を見出すこと、対立軸で比較すること、原因と結果を関連付けること、優先順位で考えること、が分析の手法としてあげられました。
ここで、再び1日目の冒頭と最後に行なった「在庫管理のトラブル」の個人ワークに戻ります。効果の高さとかかるコストを、マトリクスを使いながら、優先順位の高い解決策について、それぞれが考えました。
参加者各自が、さきほどのマトリクスの中から、一番優先すべき解決策を選び、具体的な理由を3つあげて、最終見解を作っていきます。ここで参加者から「理由は3つ必要か?」という質問が出ました。講師によると「2つよりも3つ揃っている方が動機づけが強くなる」「3は人が納得しやすく覚えやすい数」とのこと。納得感のある根拠であれば2つでもOK、ということも付け加えられました。
締めくくりとして、クリティカルシンキングを行なう上で、相手や周囲の感情に配慮することの必要性が語られました。現状を踏まえているかどうか、主張が押し付けになっていないかどうか、まわりの気持ちを考えながら実行する必要があるようです。また、誰もがクリティカルシンキングを知っていて当然ではないので、言葉の使い方に気をつけながら、友好的に使っていきたいところです。
講師からは「ぜひみなさんがリーダーとなって、取り組んでほしい。意見を言っていいんだ、という風土を作るのは一人ひとりの力です」というエールが送られ、参加者はみな勇気づけられていました。
オンラインのセミナーでしたが、参加者の方々の学ぼうという熱意が感じられ、非常に意義のある時間となりました。2日間のセミナー、ありがとうございました。
【取材・編集】子育て向上委員会 長谷川由香